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Story
私のたいせつなあの人は、伝説の剣を引き抜いて旅に出ていきました。
出立の日、彼は私の家までやってきて、玄関口で小さなジュエルケースを取り出すと、
私に帰りを待っていてほしいと言いました。
彼の背中を見送りながら、薄紅色の小箱を開けて、中身の指輪をはめてみて…
私は苦笑しました。だってあの人、あてずっぽうなサイズを買ってきて、
あんまりにもぶかぶかだったものですから。
たくさん手紙を書きました。
気取っているけど、実は寂しがりやなあの人が寂しくないように。
毎日玄関口に出て、手紙の返事を待ちましたが、
彼から便りが戻ることはありませんでした。
そして、ある時。
勇者の動向を追う雑誌の記事で、とうとう彼の、消息がつかめなくなったことを知りました。
これは、それから私がのこした、みっつの手紙の文面になります。
Raffaello Savant Presents
アルゴノーツのおたより
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